三井砂川炭鉱(以下砂川炭鉱と呼ぶ)は石狩炭田北部の中空知地区に位置し、1914年(大正3年)に三井鉱山社が砂川出張所を開設して開坑以来、1987年(昭和62年)の閉山まで73年に亘って、美唄、登川、夕張の各夾炭層に14の坑口(直営子会社を含む)を開いて採掘を行ってきた。1973年(昭和48年)には所謂白黒分離策に則って三井石炭鉱業が設立されて砂川炭鉱の事業所名は三井石炭鉱業(株)砂川鉱業所となった。
 砂川炭鉱が主に稼行した美唄夾炭層および登川夾炭層は炭層傾斜が50°〜70°の急傾斜で、所謂急傾斜炭鉱であった。
(1977年以降は稼行を美唄夾炭層に集約していた)
 一般的に急傾斜を採掘する炭鉱は、緩傾斜を稼行する炭鉱に比べて厳しい操業を強いられるとされる。海抜−1,100m
(地表下1,250m)まで開発を進めた砂川炭鉱もその通りで、おおよその状況は次の4点である。
 @深部への移行速度が早い。
 Aそのために坑道掘削量が多く維持坑道が増えて骨格構造が複雑化する。
 B深部での採掘には地圧、ガス湧出の増加、ガス突出など自然事象の技術的解決が必須となる。
 Cそのために生産コストは増大した。
 Dさらにコスト低減につながる機械化採炭が困難である。
 しかしながら当鉱は伝統的に新しい技術への挑戦を続けており、1964年から国内の操業炭鉱では経験の少なかった水力採炭法を導入、多くの課題を克服してこれを完成させ、災害率・生産性ともに飛躍的に向上、さらにコストの大幅低減も達成した。しかしながら
 1987年(昭和62年)7月14日、国の第8次石炭政策に沿って静かに閉山した。

 私は1965年に新入社員として当鉱へ配属され、1985年に転勤するまでの20年間をここで働いた。炭鉱会社を退職した後、地上産業に転職したが、閉山後には砂川炭鉱の足跡を記した文書はほとんどなく坑内で身体を張って働いた一人として何とも寂しく感じている。閉山にとどまらず会社も消滅、親会社は社名も業態も変わった今、操業時代の姿を思い起こす資料さえも見つけるこができない。昔の仲間と久しぶりに話す時に「種」が欲しいと私は手元に残る数少ないデータを整理して備忘録を作ってみた。
 備忘録には  @概 況
        A旧坑口の観察記録
        B資料写真等
        C(個人的な)雑記を載せた。

 概況には昭和53年度と昭和62年度のデータを併記した。昭和53年度には欠口採炭と水力採炭の両部内を稼働させて、年間100万dの安定出炭を行っていた。昭和62年度は閉山を迎えた年である。


       初 2009.06.15
       改 2009.08.15
       改 2009.10.31
       改 2010.05.15
       改 2010.10.31
       改 2017.10.01サーバー変更
       改 2019.02.25
       改 2019.04.17
       改 2019.09.20
       改 2021.02.21
       改 2021.04.17

【注意事項】
1.この備忘録は私が趣味として制作したものでデータの信憑性、整合性の確認は行っていない。
2.内容に誤りがあっても責任は負わない。
3.使用した写真等で引用したものは出所を記載した。
4.参考文献:砂川概況、山の歩み五十年(写真集)、三井鉱山の百年。
5.山の歩み五十年ならびに三井砂川鉱業所写真帳は尾崎稔男殿がスキャンした画像データ。
6. 出炭は元同所炭務課長小林義昭殿が集計した電子データを使用した。
7.内容の一部または全てを転載することを認めない。    2009.06.15 塩島 宣治


追記:炭鉱会社を退職後にグループ企業のソフトウエアー会社へ転職した。ここでは本業の他に海外炭鉱、金属鉱山、建設会社への技術支援と関連機器の製造販売を定款に追加した。海外炭鉱へはガスセンサ信号の伝送システム、選炭工場の制御システム、坑内無線システムなど数多くを製造販売した。金属鉱山へは環境モニタリングセンサ、伝送システムなどを。
 トンネル掘削でメタンガスが湧出した現場では、通気・監視・防爆インタロックなどガス対策に関する支援を行った。土木工事では特別な対策を要するほどのガス湧出は希な事象なので、技術者は知識を持ってはいても対処の実技に不慣れである。一方で炭鉱保安技術者は日常的にガス対策を実施している。よってガス爆発等の重大災害を防止するために、炭鉱技術での支援は有効と考えている。
 トンネル掘削のガス対策について「雑記帳」に若干を載せた。










追加部→
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三井砂川炭鉱備忘録
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